プロジェクトノート第2回 : 白身魚フライはどこで作られる? 原料魚はどこから届く?
- 牧野 輝彰
- 8月8日
- 読了時間: 3分
現在、日本の量販店や外食チェーンで流通している白身魚フライの多くは、中国・山東省の威海地域で製造されています。なかでも栄成市を中心とする一帯は、日本向け冷凍食品の一大供給拠点として発展してきました。この地域には約150〜200の冷凍食品工場が集積しており、従業員が200名を超える大規模工場も30〜40社にのぼります。
・「白身魚フライの製造拠点:威海地域とは?」
こうした地域特性が形成された背景には、日本企業による早期進出があります。なかでも加ト吉(現テーブルマーク)は1990年代初頭に中国進出を果たし、1993年には合弁会社を設立。白身魚フライの量産体制を構築したことで、威海地域が日本向けのパン粉付き冷凍食品の生産拠点として確立されていきました。まさにこの地域は、香川県観音寺(加ト吉の創業地)に続く“冷食の町”とも言える存在です。

出典:chinadiscovery.com
・「原料魚の変遷とその背景」
さて、威海地域の工場で製造される白身魚フライの原料には、時代ごとにトレンドがあります。
かつて、1990年代から2000年代にかけてはオランダ産ノーザンブルーホワイティングが主流でした。価格が安く、世界中で大量に流通していましたが、魚体が小さく加工の手間がかかるうえ、世界的な白身魚需要の高まりによって価格が上昇。生産効率の悪さから、現在では使用が限定的になっています。特にノーザンブルーホワイティングはWR(Whole Round=頭と内臓付き)で流通するため、前処理の負担も大きく、人件費が上がった現在の中国では「かつてのような人海戦術」が難しくなっています。
その代替として、現在最も多く使われているのがロシア産の助宗鱈(HG=Headed and Gutted/頭と内臓を除去済み)です。魚体が大きく加工の手間が少ないため、生産効率が高く、現地工場の合理化にも適しています。中国とロシアの地理的な近接性も、物流面でのメリットとなっています。
一方で、品質にこだわる一部の企業は、ニュージーランド産のホキを採用しています。ホキは他の原料よりも高価ですが、身質がしっかりしていて厚みもあり、食感やプレミアム感を訴求する商品には適しています。ホキを使う企業は、かつてから一貫してホキにこだわりを持ち、ターゲットや価格帯に応じて製品を差別化してきました。
・「主原料3種と使い分けの理由」
こうして白身魚フライに使用される主な原料魚は、ノーザンブルーホワイティング(オランダ)、助宗鱈(ロシア)、ホキ(ニュージーランド)の三種に集約されます。素材ごとの特性は、製造現場での効率や最終商品の味・価格に直結しており、単なる「冷凍食品」の範疇を超え、各企業の調達戦略に直結する重要な選択が、ここに凝縮されています。






コメント