プロジェクトノート第5回 : 異業種に学ぶ標準化とDXの力
- 牧野 輝彰
- 8月10日
- 読了時間: 3分
標準化の本質
前回までに取り上げた欧米式の水産加工やニッスイの事例では、工程の標準化とDXの融合が、生産効率と品質均一性の両立を可能にしていました。
この「標準化」というテーマは食品業界に限らず、異業種においても競争力の源泉となる考え方です。今回はアパレル業界のユニクロ、外食産業のスシローという二つの事例を通じ、標準化とDXの相乗効果について考察します。
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ユニクロ:SPAモデルによるグローバル標準化
ユニクロは製造小売型(SPA)モデルを採用し、商品企画から生産、販売までを一貫管理しています。
世界中で同じ品質・同じ価格を実現するため、素材の調達先から縫製工場までをグローバルに最適化し、サプライチェーン全体を自社の基準に合わせて統合しています。
さらに、販売データや気象情報を活用して需要予測を行い、生産量や在庫を迅速に調整する体制を構築。これにより、在庫リスクを低減しながらも新商品の投入スピードを維持しています。
「どの国でも同じ商品を同じ品質で届ける」という標準化の徹底は、ユニクロブランドへの信頼構築に直結しており、グローバル市場での競争力を支えています。
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スシロー:外食チェーンの標準化とDX活用
スシローは外食産業において、標準化とDXの融合を実践してきた代表例です。
食材調達から下処理、店舗での提供に至るまでマニュアル化を徹底し、どの店舗でも同じ味と品質を提供できる体制を整えています。
さらに、タッチパネルによる注文、自動レーン配送、需要予測を用いた仕込み量の最適化など、DXの活用によりオペレーションの効率化と顧客満足度の向上を両立。注文履歴や購買データは新メニュー開発や販促施策にも活用され、データドリブンな経営を実現しています。
海外展開では、現地の嗜好に合わせたメニューを追加するなど、標準化を維持しつつもローカル適応のバランスを取る戦略も特徴的です。
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水産業への示唆:標準化とローカル適応のバランス
ユニクロとスシローに共通するのは、「標準化されたプロセスを軸にしながら、市場や顧客特性に合わせた柔軟な調整を行っている」点です。
水産加工業においても、規格統一やDXによる効率化は競争力を高める重要な要素ですが、地域性や顧客の嗜好への対応も欠かせません。
標準化がもたらす安定供給や品質保証の強みと、ローカル適応による市場対応力。この二つを適切に組み合わせることが、グローバル市場での持続的成長に不可欠です。
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このように、異業種の事例から学べる「標準化とDXの融合」は、水産業においても十分に応用可能です。今後は自社の強みを活かしつつ、業界全体の効率化と市場対応力の向上を両立させる戦略が求められるでしょう。


スシローの北京1号店で撮影




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